まずは構造的省エネを

効果的なCO2削減へ向けて

CO2排出ゼロとは、消費するエネルギーがすべて、自然エネルギー由来のエネルギーであることを意味します。これをしっかり認識すべきです。他にいろいろ方法があるだろうなどと思うと、まやかしの議論に陥ることになります。過去30年間、そのようなまやかしの議論に乗った結果、先進諸国の中で日本だけがCO2排出削減に失敗しているのですから。
現代日本は化石燃料社会です。化石燃料に頼って過去数十年の間、日本は大きく変わりました。皆がそれを便利と思っていますが、本当にそうなのか、考え直さなければなりません。自然エネルギーを使って、便利で快適な日本未来社会を築くためには、現代日本のエネルギー消費の実態を知る必要があります。未来は急に出てくるものではなく、現代から繋がるものである以上、当然のことですね。

最大のエネルギー消費現場は道路である

最終エネルギー消費のサンキー図(日本2018)  出典IEAのHP

上記の図は2018年の日本での最終エネルギー消費を表したサンキー図です。サンキー図では対応する量が、直感的に感じられるように線の太さで表されます。
サンキー図の解説はこちら
図の左には最終エネルギー消費のエネルギー種別があります。この図から解るように日本で最も大量に消費されているエネルギーは、電気(Electricity)ではなく石油製品(Oil products)です。
石油製品が最も広く使われている理由は簡単です。液体燃料ですから、必要なときに燃すだけでエネルギーが得られ、また必要な分量を持ち運ぶのが簡単なのです。固体の石炭や気体の天然ガスと比較すれば、その便利さが解るでしょう。電気を大量に持ち運ぶためには、大容量の電池が必要です。サンキー図を右に辿ると、石油製品は様々な場所で使われていることが解りますが、一番便利なエネルギー源だからなのです。
しかし最大の消費場所は明らかにRoadです。石油製品全体の半分近くがRoadで消費されていること良く解るでしょう。道路上で消費される石油製品、つまり自動車の石油製品消費が、最も深刻な化石燃料消費を招いているのです。これは多くの人にまず知って欲しいことです。
自然エネルギーで液体燃料は出来ないの? 良い質問です。考えて見ましょう。答えはYes, we can.です。バイオマスから液体燃料を作り出すことが出来ます。
が・・・。
問題があります。現代日本で道路上での石油製品消費と同じ量の液体燃料をバイオマスでカバーするには、日本の国土をすべて、山も町も否応なしにバイオ畑に変えてしまえば良いのですが、貴方はそれに賛成できますか? 貴方の住んでいる家も壊して自動車のためのバイオ畑に変えるのですよ。自動車の中で生活すれば良いじゃないって? 自動車でどこに行きますか? え、山に行く? 山の紅葉はきれいだろうって? 山もすべてバイオ畑になっていますから、山にも京都の町にも紅葉はありません。残念ですが。現代と同じ量の道路上での液体燃料消費を確保しようと思えば、日本の国土には自動車の他には建物もすべてなくなり、残りはすべてバイオ畑にする必要があります。むやみやたらに自然エネルギーに置き換えるのは、愚策で有り無策の極致であることをお分かり頂ければと思います。
やはりEVでなくてはと思う人も多いでしょう。小泉環境相もそう考えているようです。かっこいいですね。これにも反論はあるのですが、それよりサンキー図をもう一度見てみましょう。

交通手段の切り札ー鉄道

先ほどのRoadの下に細い線が三本出ています。細い線ですから、エネルギー消費はとりあえず無視して良いのレベルとなります。そのうちの一本がRailとあるのをご確認下さい。つまりレールの上でのエネルギー消費ー鉄道です。
その線の色もほぼ青であると読み取れます。つまりエネルギー種別では、石油製品ではなく電気となります。鉄道上を電気を使って走る乗り物、電車と電気機関車です。
日本では新幹線や通勤電車が大量に走っています。それでもその消費エネルギーは無視できるレベルなのです。自然エネルギー未来社会での主たる乗り物は鉄道となるでしょう。鉄道は日本のお得意の分野でもあります。日本の鉄道を見直し、日本各地に普及させ(採算が採れないと言ってむやみに廃線にすることなく)、また有力な輸出産業として推進するならば、SDGsにも大きく貢献し、またCO2排出ゼロに向けても、とても良いスタート政策となります。
コロナ後には人口の地方分散が進むでしょう。大都会は感染症に対して脆弱です。地方移住の最大の問題は公共交通機関です。大都会は通勤の為の公共交通機関が発達していますが、中小都市ではマイカーが必需品となります。中小都市に快適で便利な公共交通システムを!!
その為には公共交通としての電車ー路面電車ーLRTが最適になります。ヨーロッパを中心に人口20万人程度以上の中小都市の多くでは、LRTが整備され快適な持続型の都市空間が展開されています。自動車の必要性を減少させ、LRT導入を進めれば、間違いなく石油依存から大きく脱却できるわけです。

高層ビルは時代に遅れた20世紀型の建築物である

20世紀に急激に発展したものに、高層ビルがあります。高層ビルに不可欠なもの、それはエレベーターです。人の足でのぼることが出来る高さには限界があるからです。高層ビルが如何に大容量の電力消費施設であるか、実例をお見せしましょう。

ある高層ビル(30階程度)に取付けられていたパネル

このパネルは現在は表示されていません。数年前私が東京にまだ住んでいたとき偶然見つけたパネルです。そのパネルは30階建てほどの中規模高層ビルに取付けられていました。その意図はともかく、エネルギー消費の本質をよく分らせてくれるパネルです。恐らく最初の意図に大きく反するあることがらを正直に表しているので、このパネルの表示はしばらく後に取りやめられたのでしょう。
秋の良く晴れた日の夕方の表示です。18時~19時の一時間の間に2500kWhの電力を消費したとあります。これは正しくは2500kWhの電力量と直すべきなのですが、まあ同じような謬りは頻繁に見られますから気にしないでおきましょう。一方右下には屋上に取付けられたものでしょう、太陽光発電の発電量が9.8kWhとあります。これはその日一日の発電量です。秋の日はこの時間ではすでに落ちていますので、丸一日かかって約10kWhの発電を行ったが、一方で一時間に2500kWh消費したと改ざんすることが出来ないデータが言っているのです。つまり一日の発電量の250倍もの電気エネルギーを一時間で消費していますよと教えてくれている訳です。先に道路上で消費される日本での石油消費をバイオマスで置き換えるとすれば、日本全土をバイオ畑にしなければいけないことを紹介しましたが、同じように高層ビルの電気エネルギー消費を、自然エネルギーで置き換えることは絶望的なまで、不可能だと素直に語っているわけです。
そのうち太陽光発電の効率が画期的に上がり、現在の1000倍にもなるだろうなど、馬鹿なこと思わないで下さいね。太陽光発電は太陽エネルギーを電気エネルギーに変えるもの、発電装置にあたった太陽エネルギーを超えた量を電気として生み出すのは不可能です。現在の太陽光発電の効率は約10%、これが100%を越えることはあり得ませんから、同じ大きさの太陽光発電ではどうあがいたってこの10倍の電気エネルギーしか得ることは出来ないのです。高層ビルは20世紀の産物、21世紀にもむやみに乱立させようという発想は止めないといけません。
それでは21世紀型はどのような建築物なのか? その一例は京都えねるぎぃっ亭にあります。これはまた改めてご紹介しましょう。

まとめ

CO2排出をゼロにすることは、化石燃料社会から脱却することを意味します。現在エネルギー源として最も大量に消費されているのは石油です。石油は様々な場面で消費されていますが、道路上の消費がその半分近くを占めています。自動車社会を脱却し鉄道主体の交通システムに切り替えていくこと、それがCO2排出をゼロにするための第一歩です。また高層ビルの電力消費は自然エネルギーで支えられるものでは到底あり得ません。高層ビルから新しい形の低層建築へ。それが21世紀型の社会ーひいてはCO2排出ゼロの社会には求められます。

えねるぎぃっ亭南駄老でした。

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