脱商業五輪、脱炭素社会へ

上の写真はポルトガルにあるロカ岬近くのビーチです。蒼天を衝く高くそびえる二つの岩。ロカ岬は高い崖の上にある、ユーラシア大陸最西端の地。その崖をトレッキングで降りたところにこのビーチがあります。観光の延長として行くことは出来ないので、人影はまばらです。この岩のてっぺんはロカ岬とほぼ同じ高さ。二つの岩と岬本体とは波が切り離したのです。長い自然の営みがこの雄大な自然を生み出しました。左下に人が映っているでしょう。その人と比べて岩と波の壮大さを理解して下さい。

福島で地震

福島で地震がありました。
思えば東京オリンピックの招聘の第一の目的が復興五輪でした。東日本大震災、それに打ち続く大津波、そして地震と津波の複合天災に完全にやられた福島原発事故。そして東京が復興したと世界に宣伝するための復興五輪。え、ここに何で東京が出てくんのや?? 将来人は不思議に思うに違いありません。
その東京復興五輪がコロナのため、また森組織委員会長の時代錯誤の失言のため、開催が限りなく疑わしくなりました。そして森さんが会長を辞職するというニュースの記憶もまだ新しい間に、復興五輪の原点であるはずの福島に地震が襲ったと。これは昔からの日本の感覚では「たたりじゃ」という言葉がピッタリとくるのではないでしょうか。
かわいそうなは福島や、そしてそれから東北や。何の因果か因縁か?

天は日本人に強い警告を与えている

東日本大震災が日本人に思い出させたことは、自然には勝てないことでした。寺田寅彦の言葉を借りれば、忘れた頃やってくる天災という自然の怒りを、日本人は伝統的に受け入れ、それでも通常の自然の恵みはそれ以上に有難く、そのすべてを含めて自然に感謝しながら、長い歴史の中で豊かな文化を創り出してきました。時々起こる天災は、人間という動物が思い上がることを戒め、自然の恵みの中で工夫しながら、豊かな生活を代々築くための「神様の怒り」と受け止められてきました。
東日本大震災の後、人々はさまざまな事を考えました。古い日本の伝統、戦後の新しい文化の流れ、その二つの流れを各自が考え、その二つの流れを融合し、日本の新しい歴史を作り出す良いきっかけだったのです。
東京オリンピック招致のころから、流れがおかしくなってきたように思います。福島を初めとする東北地方を復興させるはずが、いつの間にか「日本」を、特に「東京」を、更に「成長」させるという問題のすり替えが起こりました。
もともと東京一極集中は行き詰まり、地方分散型に社会を変えていかなければ経済的にも成り立っていかない状況に日本はありました。それを示した原発事故を、利権にまみれた電力会社は、集中的な大規模発電を維持するために、大規模火力発電及び原発事業を継続させようと、原発事故直後から御用学者を初めとするいわゆる専門家達を集め作戦を練っておりました。そしてそれに支えられながら、更に利権にまみれた国際的大企業達は東京集中にこだわり、その象徴として東京オリンピックを招致したのです。
東北地方が受けた天災から復興した姿を東京で見て下さい。何という論理のすり替えでしょう。でもこの論理のすり替えを可笑しなものだとは考えない、東京中心の社会構造がありました。
東北地方は日本の多くの地方同様、戦後の東京集中のあおりを受け、数十年かけ衰退していきました。そして地域の生き残りのために、東京に集中する電力の供給源として、大型火力発電所と、原発を設置していました。もともとは食料の供給源として江戸ー東京を支えていたのですが、エネルギーの供給源となることで地域の大きな収入源として、近代以降地域経済を支えてきたのです。でもその為のエネルギー資源は、化石燃料にせよ核燃料にせよ輸入に頼る、いびつなおよそ持続性がない経済基盤でした。
今日起きた地震でも東京で停電が起きているとニュースが入っています。もちろん東京でも今回の地震の影響はありましたから東京で電柱が倒れたという理由で停電が起きた可能性はあります。多くの人がそう考えたのではないでしょうか?
しかし私は決してそうではないと思います。福島の原発は今回もちろん止まりました。そして福島にある大規模な火力発電所が、地震の影響で停止したとニュースが伝えています。
東日本大震災の後、計画停電という事態に発展しました。これは東北地方にある原発も大規模火力発電も停止したため、東京への送電能力が致命的に不足したからです。
東北地方が天災に襲われたら、東京がエネルギー不足に襲われるという構造を、10年前と同様露呈したのです。このいびつな構造を変えることなく、東京が復興したというメッセージを出したがる日本の指導者達の滑稽さ。森さんの滑稽さにも繋がる、時代錯誤の感覚ではないでしょうか?

コロナ禍で助かった電力事情

一夜明けて、東京の電力は心配ないと、加藤官房長官が明言しました。良かったですね。でもちょっと待てよ。もしコロナ禍でなければどうなっていたか? コロナ禍がなければ選手村は準備作業で稼働していたのでは? 選手村は高層ビルです。高層ビルは大量に電力を食います。その証拠をお見せしましょう。

上の写真は30階ほどの中規模高層ビルにあったパネルです。左上に使用電力とありますが、そのビルで消費している電力ですね。正しくは使用電力量と書くべきなのですが、18時~19時の一時間で2500kWh消費したと言っているわけです。
一方その右下を見てご覧なさい。太陽光発電本日の累積発電量とあり、それが9.8kWhであることが示されています。一時間で2500必要なのに、一日で10も作れなかったよと正直に言っているのです。この写真を撮ったときは、秋晴れの良い天気でした。すでに夕刻です。その日の太陽光発電は9.8kWhを持って終了しています。秋晴れでしたから、一日の発電量は通常これを超えることは余りないでしょう。一方夏は終わり季節は良い、したがって空調の消費エネルギーはほとんど使わなくて良い季節です。事実夏暑いときは4000kWhを越えたりしていました。
このパネルどういうつもりでつけられたのでしょうね。明らかに失敗したと思ったのでしょう。しばらくしてこの表示はこのパネルからなくなりました。受付の人に「あの情報は役に立ったから、復活して欲しい」と注文しましたが、復活することはありませんでした。
いずれにせよ高層ビルが大口の電力消費装置であることはお分かりいただけたでしょう。東京オリンピックに向けて高層ビルが林立しています。これらは東北地方の大規模発電に頼っています。
皮肉にも東京に高層ビルを建てることで、東北地方での発電が盛んになり、東北地方の復興に役立つのだと、ここ数年言われてきたのかも知れません。今回の地震で原発や火力発電が止まっても電力供給には問題がないと官房長官が言い切れたことは、コロナ禍でフル稼働の電力供給が行われていないことで助かっただけだと言うことを、東京人は気がつかなければいけません。東京オリンピック開催時に、今回の地震が起きたとすれば。計画停電がオリンピック最中に行われ、日本の面目丸つぶれだったかも。
コロナ禍がなく、また今回の地震が5ヶ月遅れで起こっていたとすれば・・・。コロナ禍を起こし、地震を5ヶ月早めてくれた日本の神様は、日本に特別の目をかけて下さったのかもですよ。

東京オリンピックは中止でしょう

予定通りの東京オリンピック開催を支持している人は、日本では今やほとんどいません。世界でもそうでしょう。出来ないと感じている人が圧倒的に多い状況です。したがって問題はどのような形で中止を決定するかです。
今回の地震は中止の理由になります。もともと東日本大震災からの復興を目指したオリンピックでした。天災に打ち勝った証として開催したかった五輪。その延長でウィルスに人類が打ち勝った証として開催したいと安倍政権が考えた五輪。その思い上がりを他ならぬ福島の地震が打ち砕いたと、正直に世界に発信すれば良いでしょう。
自然には勝てない、自然と共に生きてきた日本人だから、その歴史の重みを持って主張すれば良い。コロナ禍の中で、「自然には勝てない。自然が荒れるときは、人はおとなしく自粛して、自然の神の怒りが収まるのを待つだけだった」、日本伝統文化を世界に紹介すれば良いのです。東日本大震災で、世界を驚かせた日本人の我慢強さは、その伝統が生んだ習性なのですから。
世界的なパンデミックは、これからも世界を襲うでしょう。そのたびに全世界の経済が、休止しなければいけないでしょう。20世紀までの「絶え間なき成長競争」の幻想は成り立たなくなります。休み休みの成長、持続的な社会、成長を競いながらも互いを助ける社会、そのような価値転換が求められる時代に、すでに入ったことをコロナ禍が示しました。それを素直に受け入れ、コロナ禍が要求する新しい価値観を、日本人は昔から持っていたことを、日本人自身が思い出し、それを世界に発信するのです。それが真の意味での「東日本大震災からの復興」となるのではないでしょうか? 
日本は遅れている、この言葉は団塊の我々ー森さんや菅さんを含むーが、一生を通じて聞いてきたことだし、また時にはそう発言して改革を訴えてきた言葉でもあります。しかし東日本大震災が教えてくれたことは、日本は遅れているどころか、日本はこれからの時代を牽引する文化を持っていると言うことでした。私は震災時の東北の人達の振る舞いに、素直にそう思いましたし、当時日本人の多くがそう感じていたと思います。それどころか、世界中からそのような賛辞が寄せられていたと記憶します。日本は遅れているという言葉を発したくなったら、東日本大震災の被災者達の行動を復習しませんか? 
30才以上の人が日本は遅れているというなら、私はその人を信用しません。

自然エネルギー宣言を

東京オリンピック中止を決定しても、怒る人は世界中にいないはずです。いるとすれば、IOCバッカ会長、もとい(大失言)バッハ会長だけでしょう。東日本大震災同様、五輪中止は世界の同情と共感を集めるでしょう。そして安倍時代錯誤長期政権と、男社会を逆手に取ることで成立した女帝都政が、これだけ失敗しても、感染者数死者数の少ない日本に、世界の関心の目がポジティブに向けられるでしょう。
そして日本人は前向きになることが出来ます。日本の現首相菅さんの唯一のそして最大の成果は、2050年までに脱炭素をと言ったことです。東京オリンピックを中止することで、このメッセージに大きな現実味をつけることが出来ます。
東京という過度に密な大都会に、密なエネルギーを送るために、東北地方に原発や火力発電所が沢山できました。これは脱炭素と真逆な方向を向いています。この構造を見直し、東京一極集中を止め、地方分散型社会を築くことで、自然エネルギーに支えられる国土を作り出すことが出来ます。東京オリンピックを止め、自然エネルギーに支えられる日本を作る、そしてそれを持って日本は世界の脱炭素化を主導すると宣言するのです。誰も怒りはしない、日本の大企業も怒ることは出来ない、何故なら2050年までに二酸化炭素放出をゼロにするという政策に、誰も反対しなかったのですから。
菅さん、心あるそして有能な政治家の皆さん、このチャンスを逃す手はないですよ

えねるぎぃっ亭南駄老でした。

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