巨大台風ー日本近海の高温化の原因

このプログでは、エネルギーの基本法則を考察の土台としています。その基本法則を簡単に言えば、①エネルギーは形を変える②形を変えてもその量は変わらない③形を変えながら、最後はすべて熱エネルギーになる、です。つまり貴方がエネルギーを消費すると、その量だけ熱エネルギーが発生するのです。誰もほとんど気にかけないようですが、エネルギーをしっかり考えるとこうなります。皆が感じている異常気象と、貴方が消費する大量のエネルギー-大量の熱エネルギー発生-に関係はないのでしょうか?

発熱量を見積もってみよう

現代人の身の回りすべてが、多かれ少なかれエネルギーを消費します。それらはすべて発熱体となります。その発熱量は、エネルギー消費の大きさそのものです。それらの大きさを見積もってみましょう。何簡単な計算ですよ。

人もエネルギーを消費します。そのエネルギー源は食事です。どれだけのエネルギーを消費するか? 食事のエネルギーは良く知られていますから皆さんご存じです。一日に約2000キロカロリーが、平均的な人のエネルギー消費量です。これはおよそ100Wになります。人は100Wの発熱体でもあるわけです。
満員電車が冬でも暑くなるわけです。それをちょっと考えて見ましょう。東京の満員電車では通常でしょうが、1両の車両に200人の人が乗っているとします。そうすると100×200で二万ワットという値が出てきます。車両の中に二万ワットの発熱体があるわけですが、家庭で使う通常の電気ストーブはおよそ1000ワット程度ですから、満員電車は1両に家庭用電気ストーブ20台乗せて走っているようなものです。そりゃ熱くなるでしょうよ。

自動車

自動車は誰にでも身近な物ですが、恐らく日常的にどこでも出会う中で、一番の発熱体だと思います。通常の乗用車の燃費は10km/L程度です。つまりガソリン1リッター燃して10km程度の距離を走行しています。最近の自動車はもっと燃費は良いはずだと思われる人もいるでしょう。プラグインハイブリッドなどを考えてはダメですよ。電気も燃料にすれば、電気もエネルギー源として、加算しなければなりません。完全なガソリン車で、車体重量も2ton程度であれば、どんなに頑張ってもリッター当たり15kmが実際の処と思います。

さてそのような乗用車は何ワットでエネルギーを消費しているでしょうか? ワットという単位はパワーを表す単位であり、一秒何ジュール消費するかの単位です。人はおよそ100ワットですが、これは一秒で100ジュールエネルギーを消費していることを表します。
簡単な計算に拠りますと、時速50~60kmで走行する乗用車は約五万Wでエネルギーを消費しています。つまり五万ワットの発熱体です。1000Wのヒーターの50倍ですから、乗用車一台で50台のヒーターを乗せて走行しているようなものです。

だから公共交通機関を使わないとエコでないのだと思われる貴方。貴方は優しい方だ。でもバスの燃費をご存じですか? 実は東京都と京都市のバスの一年間の軽油消費量と、やはり一年間の総走行距離を調べてもらいました。それを元にバスの燃費を計算してみると、どちらも期せずしてリッター当たりおよそ2kmという値になりました。乗用車のおよそ5倍になります。もし時速50~60kmで走行すれば、25万キロワットという発熱体になります。

実は調べてもらう前に私はこの値を予想していました。バス一台は通常10トン程度です。乗用車のおよそ5倍です。自動車の消費エネルギーは、重量にほぼ比例するのです。

ヒートアイランドとゲリラ豪雨

今年の夏は本当に猛暑でしたね。段々日本は暑くなっています。異常気象の一環ですね。だれでも否応なしに実感していることです。
気象は複雑です。何故暑くなるかについては、気象学者は色んな現象について、そのメカニズムを理解しなければなりません。様々なメカニズムを組み合わせて、ああだこうだと議論するわけです。
でも庶民も実感で何かを感じ取ります。昔はこんなに暑くなかったよとか。もちろんエアコンがなかったですから、今の方がエアコンをつければ過ごしやすいのは明らかです。でもエアコンなしのとき、どちらが過ごしやすいか。若い人はエアコンがなかった時代を知らないだろうから、比較できないかも知れないけど。

ヒートアイランド

ヒートアイランドという言葉ご存じですか? 都市が熱くなっている現象です。東京都心は周囲と比べて気温が高くなる現象です。その原因は二つあります。一つは地面のありかた。もう一つが人口排熱。人口排熱とは、まさに上に記したことです。人工的なエネルギー消費によって、そのエネルギーが最後に熱となる。それは自然の熱の流れではなく、人工的な排熱になるのですね。

もう一つ地面のありかたは、地面が植物で覆われているか、それとも人工的なもので覆われているかの違いが生み出すものと考えて下さい。植物で覆われると温度が下がるのです。
それも簡単な理由でわかります。植物は蒸散作用といって、葉の裏から大量の水蒸気を放出します。これは植物にとっての「汗」と考えれば良いでしょう。夏熱いとき人は汗をかきますが、それは汗を蒸発させて体から熱を奪っていくための巧妙な仕組みです。同じように植物も葉の裏に蒸発の機能を持たせ、強い日差しの時も葉の温度が上がらない仕組みを備えているのですね。生命とは実にうまく出来ていると思います。
いずれにせよ地面が緑で覆われていると、水の蒸発によって気温が下がります。木陰が夏も涼しい訳です。でも近年のヒートアイランドは、そのような自然の涼しささえも追いやってしまうほどになりました。大都市に集中すれば、緑も薄くなり、夏の暑さも余計に応えるようになりますね。

ゲリラ豪雨

東京を離れて地方都市に住んでみれば、明らかに違うことに多く気がつきます。例えば地方都市にはアメッシュがないのです。不便だろうと思う東京の人がいるかも知れません。でもそれは違います。アメッシュが必要ないのです。
地方の人は思うでしょう。アメッシュって何? アメッシュというのは、東京を網の目(メッシュ)に分けて、それぞれの目で雨が降っているかを、瞬時で見ることが出来るソフトです。アメッシュで検索してご覧なさい。すぐ出てきますから。
始めて見る人は感激するかも知れません。東京都およびその近辺の地図の上に、あたかもレーダーで見た雲のごとく、雨の強さを表す模様が浮かび上がります。そして遡って5分おきに、過去2時間の状態がわかり、それを動かしていけば、近い未来に雨がどこに降りそうだと、視覚的に解るようになっています。都心からの帰宅には、欠くことが出来ないアプリ(ソフト)です。
東京にいるとゲリラ豪雨に頻繁に見舞われます。気象の専門家はゲリラ豪雨という言葉は専門用語ではないので使いたがらないのですが。しかし専門用語とは、それが専門家の考察対象になって、確立したと多数の専門家が認めて始めて専門用語になることを考えれば、気象の専門家が今に至るまで、都市のゲリラ豪雨を専門的な見解で認めるには至っていないことを、示すエピソードにしか過ぎないとみることが出来ます。東京のゲリラ豪雨は最近の現象であり、また普遍性を持ちにくい現象であるとも言えるわけです。一方東京の人にはアメッシュが必須のアイテムであることが、東京ではゲリラ豪雨が当たり前の現象として確立していることを示します。地方都市ではゲリラ豪雨は頻繁には起こらないのです。

夕立

夕立は昔からある、またどこでも起こりうる気象現象でした。もちろん私の子供時代からありました。科学少年だった私は、科学雑誌で夕立の原因について学び、なるほどと今でもその説明を覚えています。
夕立は夏の終わりに頻発します。夏の盛りには通常気象は安定しています。太平洋高気圧が張り出し、日本全国晴れて暑い日が続きます。地上のエネルギー源は、すべての自然エネルギーの元である太陽だけです。太陽が出る間は太陽が照りつけ、日が落ちると放射熱で地面の温度が下がり、夕方には涼しくなる日が繰り返されます。
夏の終わりには、この安定した構造が崩れ始めます。太陽の力が十分ではなくなり、全土を同じように暖める力がなくなります。そこで場所によって温度差が生まれてきます。
温度が高いところでは、空気が暖められ、暖まった空気は軽くなって上昇します。上昇気流です。少し弱まったとは言え夏の太陽のエネルギーは大きく、上昇気流のエネルギーも大きい。暖かい空気は水蒸気も多く含みます。その結果積乱雲(入道雲)が発生します。
積乱雲は急速に発達し雨雲に変わります。そして強い雨が降り出します。これが夕立です。
強い夕立は地面を急速に冷やします。冷やされた地面は、もはや上昇気流を生み出しません。そこで夕立を生み出した構造が崩れ、夕立は短時間で止みます。

再びゲリラ豪雨

ゲリラ豪雨は人工的なエネルギーが作り出したものです。すでに見たように大都会ではヒートアイランドが顕著です。東京の平均気温は過去100年の間に3℃ほど上昇したと気象庁では言います。ヒートアイランドですから、周りより気温が高く上昇気流が起こりやすくなります。
夕立と同じく上昇気流は積乱雲を発生させます。そして雨雲、急な豪雨。すべて夕立と同じ現象です。しかしその後が違います。夕立は地面を冷やし、結果として上昇気流を止めます。夕立はすぐ止みます。
一方ゲリラ豪雨はどうか? 夕立が太陽からの熱が原因であるのに対し、ゲリラ豪雨は人工的な排熱が原因です。夕立が地面を冷やせば、曇っている状態で太陽エネルギーは遮断されますから地面が冷えますが、ゲリラ豪雨では元となる人工排熱は止まりません。ゲリラ豪雨は移動しながらでも降り続けます。

日本近海が高温になる

今回の台風10号が巨大である理由は気象庁が発表しています。日本の南側の海水温が例年より異常に高いのです。
日本近海の海水温が100年前と比べて1~2℃高くなっているのは、以前から公表されています。国立天文台が発行する理科年表、または環境年表に少なくとも21世紀に入ってから報告されています。私は2年前の関西を襲った巨大台風も、梅雨明けの大豪雨も海水温の上昇が原因であるのではないかと、千年文化を考える会のHPで指摘してきました。

>>海水温上昇と豪雨の関係を2年前のHPの記事で見る

今読み返しても、この時の主張は変わっていません。日本近海の海水温が上昇したので、2年前の関西の七夕豪雨(梅雨明けの豪雨と覚えていましたが七夕豪雨と呼ばれていたのは覚えていませんでした)と関西を襲った巨大台風が起きたのだと、その時から指摘しておりました。今回気象庁も同じ理由で、台風10号が巨大台風になると、指摘しているわけです。
ただ違うのは、私はその原因も考察しています。気象関係者はCO2による気候変動を主張するのは熱心ですが、その他の人為的理由については否定しがちです。そこで日本近海の海水温上昇を、人為的な理由と考えたがらないのでしょう。CO2による地球温暖化は、平均気温が0.6℃上昇しているという指摘となっており、日本近海の海水温が、理科年表が公表しているように、1~2℃上昇していることは、ほとんど説明不可能であるからです。
日本近海の現象であるとすれば、日本の活動の結果であろうことは想像がつきます。ちょうどヒートアイランドのように、現代の社会活動の結果、自然現象に影響を与えたと考えるのが素直な考え方でしょう。海を暖めているのは何か?
海を暖める最大のものは、意外に思われるかも知れませんが火力発電と原発しか考えられません。気象学者が思いつかなくても無理はありません。何故火力発電が海を暖めるのでしょう。
大学勤務時代、一般向けあるいは高校生向けに、イベントを頻繁に開いておりました。イベントでは、簡単な実験を取り入れ、原理を解りやすく説明することに努めてきました。
そのような実験の一つに、エネルギーの流れから見た火力発電の説明のための実験がありました。高温の液体と低温の液体を準備します。そしてある装置の二つの金属の足をそれぞれ二つの液につけます。そうすると装置のモーターが回り始めます。電気が発生したのです。
二つの液体は温度差があれば何でも良いのです。例えばお湯と冷水でも。その二つの間には電気が流れます。そしてさらに大切な現象が観測されます。お湯は急速に冷める一方、冷水は温くなります。お湯から冷水へ電気が流れると同時に、熱も大量に流れるのです。これを知ることが大切なのです。
この実験はまじめな高校生達に人気の実験でした。高温部から低温部へと熱エネルギーが流れる。そのときその流れの一部を電気エネルギーに変えることが出来る。火力発電も同じことなんだと説明すると、火力発電について勘違いをしていた、とうなずいてくれる高校生たちが多くいたのです。
火力発電では天然ガスなどの燃料が燃されます。その結果ボイラーなどの高温部が出来ます。そして高温部から低温部へ熱エネルギーが流れます。流れ出た熱エネルギーを補給するために、燃料が燃され続けます。
それでは低温部はどこにあるのでしょうか? 大型の火力発電所あるいは原発はどこに設置されているでしょう? そう海辺ですね。海が低温部なのです。燃されて発生した熱エネルギーは、海に向かって流れます。その流れの一部は電気エネルギーに変わります。高温部から流れ出すエネルギーのうち、電気エネルギーに変わる割合を効率と呼びます。日本での火力発電の平均効率は40%です。残り60%の熱は、そのまま低温部すなわち海に流されます。つまり発生した電気の1.5倍の量の熱が海に流されるわけです。これは火力発電の仕組みとして避けられないことです。
原発も基本的には同じです。そして原発は構造上更に効率が悪く、1/3にしかなりません。残り2/3は熱として海に流されます。発電した電気の2倍の熱が、海に捨てられるのです。
10年ほど前、一般の人にも解るようエネルギーについて本を書いたとき、さまざまなことを調べました。その時調べたことによると(当時のエネルギー白書を元に計算)夏場電力消費のピーク時には一億八千二百万kWの電力を、日本全体で消費しているとあります。今年の夏は暑く、またコロナ対策で自宅に閉じこもりがちでしたから、これよりかなり大きかったかも知れません。この電力の大部分が火力発電に拠りますから、仮に10年前の値を1.5倍しても、海に捨てられている熱は二億七千万kWほどになり、日本人一人一人が、千ワットのヒーターをそれぞれ2台ずつ持って海辺に立ち、そのまま海に熱を逃がしてやる以上のことを、火力発電がやっているのです。日本近海が熱くなるのも不思議ではありません。
以上述べたことは、2年前から言っていることなのですが、人々は聞きたがらないようです。今度の台風を受けて、少しは聞いてくれる人が増えるのを期待します。
日本近海の高温化をどう止めるのか? それは海に流す熱を減らすことに尽きます。節電や脱原発・脱低効率火力発電です。さらには自然エネルギー産業革命。すべてこのブログで主張していることです。
どの程度経てば日本近海に溜まった熱を無視できるまでに拡散できるかは簡単にはわかりません。でも今年の超大型台風襲来が、コロナによって人々がエアコンを通常の夏より多用した結果だとすれば、海に捨てた熱の効果がてきめんに現れたことになります。逆に言えば捨てる熱を減らす効果は、かなり速く見えてくるということにもなります。意外と速く海に溜まった熱は拡散するのかも知れません。自然エネルギーによって支えられる社会建設へ、期待を持てる現象かも知れないと思っています。
ついでに言えば、高温部から低温部への熱エネルギーの流れの一部が、熱以外へのエネルギーに変換される構造は、ここで述べたすべての自然現象に当てはまるのだと言うことを考えて頂ければ、エネルギー理解が深まると思います。

えねるぎぃっ亭南駄老でした。

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