コロナ感染者数の動的解析-日本とドイツの違い

2020年7月下旬でのコロナの感染状況を、全国と東京について現状を分析してみましょう。刻々と変化する事態の解析は、日々の出来事を追跡し、先行きを予想するために必要です。日本ではあれほどたくさんのエコノミスト達が、それを実践的な情報として発信しているにもかかわらず、コロナ予想では全くその視点が欠けているのが不思議な気がします。毎日の感染者を報告し、一喜一憂するのでは、人々に不安と疑念を抱かせるだけでしょう。科学的態度とは恐ろしくかけ離れています。
ここではそのような追跡を試みます。このような解析法を、動的な解析と呼びます。何難しくはありません。
またドイツの状況とも比較します。

新規感染者の全国の状況

新規感染者の推移

まず下図に2月22日~7月20日までの4ヶ月間の、全国の新規感染者の推移を見ていきます。青線は生のデータを折れ線で示したもの、赤線はその日に至る過去3日の平均値を、その日の新規感染者とすることで、生データの偶発的な凸凹を多少なりと、平準化させた上でのデータとなります。
赤線はかなりスムースに増減を捕えたものになっているでしょう。赤線では一週間周期で波打っていることが解ります。PCR検査を行うのは人ですから、週単位で検査の数が変わり得ます。それを反映しているわけです。第一の山を越えたものの、第二の山が大きくなりつつあることが、はっきりと解ります。

週増加率

週単位で新規感染者が波を打っていますので、当日のデータを一週間前のデータで割ることにより、増減の傾向がより一層はっきり解るようになるでしょう。これを週増加率と呼ぶことにしましょう。下図に3月20日から7月20日までの週増加率を示します。

日付を注意しながら、新規感染者数と比較してみましょう。元に戻るには上部メニューバー左の戻るマークで。
全国の新規感染者数の推移を見る
何故3月20日からとしたかには、二つ理由があります。
一つ目は初等数学的理由です。
ここで試みるのは統計データの解析です。それも初歩的で誰にでも解るシンプルな方法を使います。三日で平均することを書きましたが、平均も統計的手法の一つです。最近では一週間平均を多くの自治体で採用していますから、平均は抵抗なく受け入れていただけるでしょう。一週間では長すぎて細かい変化を見逃す可能性があるので三日平均としました。
統計データの信頼性はデータが多いほど増します。ここでは全国と東京のデータを使いますが、3月20日までは東京のデータはせいぜい10程度の日が多いので、明らかに二桁になる3月下旬からとします。全国的にも3月20日過ぎてから、感染者数が大きく増加に転じたことは、週増加率の図で解るとおりです。全国の週増加率は3月24日に1を越え、急速に4月1日の3.14まで伸びています。

東京でのデータ

新規感染者の推移


不思議なことに3月24日は東京オリンピックが、一年延期と決まった日です。そして25日から日本は急に感染防止モードに入ります。
東京の感染者数も25日を境に、急速に数が増えます。都の新規感染者数のデータを見れば、3月20日~24日では11,7,3,16,18と、一桁かせいぜい10台だったのが、25日~30日には41,46,40,64,72,12,78と移行し4月4日には100を越え、その後三桁が当たり前になります。
その様子は下の図の東京での新規感染者数の推移からご覧いただけます。
でもひょっとして、オリンピック延期決定前にはPCR検査を少なくするとか、何か操作をしたのかな? 世界はそう見ているから、日本はPCR検査が少ないと騒いでいるのかも。ニュアンスを含めた世界の情報って解りませんからね。日本での世界に対する報道も、一面的かもですよ。いずれにせよ、3月24日は政治的に特別な日だから、注意喚起のため、3月20日からの図としました。第二の理由です。

東京のデータを全国のデータと比較しても面白いですよ。元に戻るには上のメニューバー左を使います。
全国の新規感染者数増加を見る。

週増加率

それを考え合わせると、東京の週増加率に見られる3月末の特異点を、重視してはいけないと言うことになります。3月末即時的に解析を試していた私は、この特異点を重視していました。何しろ瞬時でも一週間前の値との比が8にまでなっていたのですから。
オーバーシュートという言葉がこのころしきりに言われていました。オーバーシュートの定義すら言わずに。皆さん言葉は覚えているでしょう。しかしオーバーシュートって何?と聞かれて、答える人は皆無でしょう。言い出した小池都知事も答えないでしょう。答えをはぐらかすの上手ですからね。また専門家も答えないでしょう。でもオーバーシュートは起こりえたという風に専門家は言っていますし、皆もそう思っているでしょう。でもオーバーシュートって何? 敵が何か解らなくて皆怖がっているのでしょうか?
孫子曰く、敵を知り己を知らば百戦危うからずですよ。いつ日本人は敵を知らずに怖がるようになったのでしょう?

新規感染者数と比較してみましょう。
また全国の週増加率とも比較してみましょう。
オーバーシュートは一週間でほぼ10倍の感染者が出たことを指します。欧米ではではそのような急激な感染拡大が起きました。
一週間で8倍という事態が一瞬でも起きたかどうかは、このことを考えれば重大なこととおわかりでしょう。一時的に東京ではそれが起きた可能性があることを、すぐ上の図は示しています。後で見ますが、週増加率が5前後で、しばらく経緯した時期がドイツを代表とする西欧諸国では続いたのです。
この特異点は全国の週増加率にも反映しています。まったく同じ時期、全国の週増加率は3以上になることは、全国の週増加率の図で見て取れることは、すでに指摘しました。全国の週増加率が3以上になるのは、現在に至るまで、この時期だけです。3以上というこの値は信用できるのでしょうか?

増加期には、東京が全国の感染を先導する


ちなみにこの時期から東京の感染者は全国の感染者を先導するようになります。東京の人口は全国の人口の10%程度です。仮に公平に感染者数が人口に比例すると考えると、東京の感染者数は全国の10%程度でしょう。三月二十日前ではほぼその通りでした。しかし3月下旬から東京の感染者は全国の感染者の1/3以上、多い場合は80%にも上る事態が当たり前になりました。下図に東京の新規感染者が、全国の新規感染者に占める割合を、時系列で示します。


感染者の第一の山が一段落する五月上旬まで、東京の感染者はほぼ一定して、全国の30%前後を、コンスタントに行き来しています。この事態は東京から新しい感染者が次々と補給され、収まったと思う地域にも新しく感染者が供給されると考えて始めて理解できます。その説明は、より複雑な統計理論が必要となりますから、今回は控えておきますが。
しかし今指摘しておかなければならないのは、いったん山を越えたとみられる現在、その状況が再現されていることです。東京で明らかに新しく山が出始めた6月中旬から、東京の感染者数は全国の50%から60%を常に保持しているのです。これは第一の山と同じように東京の感染者が全国を牽引していると考えれば、統計理論から理解できます。そして前回より東京からの影響が少ないから、言い換えれば、東京発着の往来が少ないから、前回の30%に対して今回の60%弱になったのです。前回は緊急事態宣言が発出される4月上旬以前に、東京主導の構造が出来ていましたから。
ある政治家が言ったようにコロナ問題は東京問題なのです。そしてデータの恣意的な誘導は対策を謬ります。コロナ禍がこれほどまでの国家的、そして世界的問題となった今、対策の謬りは国家の存亡の危機に繋がり得ます。嘘をつく政治家がいても、嘘にだまされては歴史の重みを持つ、日本文化に申し訳が立ちません。

ドイツでのデータ

参考までにドイツでのデータを下の図に示します。図では左が少し切れ、縦軸の数値が見えませんが、一つ2000人です。ドイツの最大値は10,000人を少し越えたのです。欧米諸国では、3月の初めにオーバーシュートが起きました。そのころ感染者数が、一週間で10倍になるような事態が、2週間続いたのです。
>>オーバーシュートの状況の説明を見る
その結果ドイツでも一日の感染者数が5000人を越える日々が続きました。感染のピークが一桁日本と違ったのです。しかしドイツはメルケルさんの指導の下、4月始めに山を上手に越え、一日の感染者数が数百人にまで押さえ込まれたのが5月半ばになります。
その有様は週増加率を見るとよく分るでしょう。また週増加率は3月いっぱい、5前後で推移した経緯をご確認下さい。1週に5倍増加すれば、四週間で625倍になります。東京で週2倍程度が続きましたが、これは4週間では16倍となり、その桁違いの状況をしっかり理解して下さい。

日本の新規感染者増と比較
ロックアウト後の対策が、メルケルさんと小池百合子さんでは、決定的に違いました。一見同じように見えた対策かも知れません。つまり二人とも3段階で規制を緩めていきました。
だが決定的な違いを見逃してはいけません。メルケルさんは一つ規制を緩めると、三週間様子を見ていくと宣言し、その通りの実行を行ったのです。決してずるずると次の緩和を行うような、全くの科学音痴ではなかったし、明らかにパフォーマンスである態度とも無縁でした。
何故3週間様子を見るかは、少し考えれば子供でも解ります。規制緩和の結果は2週間すれば明らかになります。更に一週間おいてその結果を誰の目にも明らかにして、次の段階に進むか否かを判断するのです。どうです。誰でも解る科学的な態度でしょう。都合が良いように「専門家が言っている」と印籠を示す20世紀型の政治ではないのです。
この経緯を週増加率で見ていきましょう。日本でも欧米の緩和が始まると報道されたのは4月下旬のことでした。その頃は週増加率1以下の日が続いていました。そしてその後も週増加率は基本的には1以下が続きますが、時々1以上になります。
そして6月下旬に決定的な影響が出てきます。週増加率が3前後で推移する事態が続きます。これは第三番の段階の解除の結果だと思いますが、いずれにせよそれに対する対策が取られ、週増加率は1前後に収まり、結果感染者数が増えない状況は保たれています。それは新規感染者数の推移の図で解るでしょう。

感染者数の推移と比較
日本の週増加率と比較
誰でも解る対策を取る必要性を示したドイツの数値だと思いますが、如何でしょうか? 数値は厚労省のHPからのものです。報道陣でなくとも、誰でも調べられる数値です。しかし政府も含めて、これらの数値を、宝の持ち腐れにしてなければ幸いです。

久しぶりに感染者数を追跡してみました。改めて日本のリーダーの度しがたい科学音痴に驚くばかりです。一方で彼らの幸運さを思わずにいられません。週増加率が何もしなくとも、2を越えそうにないのですから。感染経路不明の感染者が、以前から取り沙汰されていますが、何ヶ月も取り沙汰されて、まだ指数関数的に増えたのが感じられないのは、週増加率がこれからもそれほど高くなるとは思えません。
しかしながらそれほど高くは無いと言っても、何もしなくては1.5ほどあるようですから、秋にはこのままだとかなりの数になるでしょう。小池都知事、なんと言っても東京が感染源です。しっかりと有効な対策を練って、週増加率を1以下に抑えて下さい。やってる感だけ出している場合じゃないですよ。ドイツは緩和後も一度3程度に跳ね上がったのを1以下に抑えることに成功しました。日本で出来ないはずはないでしょう。やってる感を出すのではなく、やってる実績を出して下さい。お願いしますよ。

えねるぎぃっ亭南駄老でした。

おすすめの記事