エネルギー基本計画即電源構成は正しい政策か?

IEAのサンキー図より

IEAのエネルギーサンキー図については、すでに別記事で紹介しました。
IEAのサンキー図の説明を読む
IEA(International Energy Agency)はオイルショックさなかの1973年に、OECD諸国が設立したエネルギー安定供給のための国際的組織です。「クリーンなエネルギーを全世界の人々が安定して供給されること」はSGDsの7番目の主題(SDG7)であり、今後SDG7を達成する上で大切なデータ提供を行うことで、管制塔みたいな役割を果たしていくでしょう。
創立されて以来、IEAはエネルギーについての俯瞰的総合的なデータを、全世界の国について収集してきました。エネルギーを俯瞰的総合的に見るには、IEAのデータを調べるのが一番いいのですが、ほとんどの人がそれを行っていないようです。

日本のエネルギー消費の歴史

日本のエネルギー消費を、オイルショック時、原発事故直前、現在の順に見てみましょう。それぞれ1973年、2010年、2018年のデータです。

オイルショック時

左端にあるのが一次エネルギーの名称です。また線の太さがそのエネルギーの消費量を表します。一番太い線はOil impです。というよりそれ以外のエネルギーはほとんど使われていないというほうが正しいでしょう。Oil impは輸入された原油を表します。オイルショック時の日本では、エネルギー源としては輸入した原油がほとんどでした。
IEAはオイルショックを契機に設立されましたから、それ以前のデータを管理してはいませんが、それ以前のデータを仮に歴史学者が調べたら、とても面白いのではないかと思います。というのはその10年前までは、少なくとも日本は石炭が主力であり、それも国産されていました。世界遺産となった軍艦島や、九州の炭鉱、夕張など北海道の炭鉱が活発に石炭を排出していたのです。高度成長期にエネルギー源を石炭から石油に変更し、エネルギー源は輸入に頼れば良いと考え始めた、現在に至るエネルギー政策の基本が、高度経済成長期に造られたのです。

オイルショック後、日本はエネルギー源を一つに絞るのは、非常に危険だと思い始めました。そこでエネルギーの多様化が図られました。同時並行的にエネルギー消費も大幅に増えていきました。石油に加えて、石炭、天然ガスの化石燃料が増え、また原子力発電も増加しました。2010年、原発事故一年前のエネルギーは下の図のようになっています

2010年

1973年に比べて、線が複雑になり、また太くなっていることが解ります。様々なエネルギーが様々な場所で使われるようになり、また消費量も増えていることを表します。石炭も石油も天然ガスもほとんど輸入に頼っています。唯一不思議なのはNuclear prodの線が太いのですが、Nuclearは核燃料、prodは国産を意味していますから、核燃料は国産であるとエネルギー業界は考えているわけです。
この不思議な考えはIEAの成り立ちに依存します。IEAは国際政治のあおりによるエネルギー消費の影響を抑えるために設立されました。国際政治の影響をもろに受けなくてもすむよう、石油をどれくらい備蓄すべきかの勧告もIEAが行います。それに対して核燃料は長年の消費量をあらかじめ備蓄できます。そこで一年やそこらの国際紛争では、核燃料の不足がそれぞれの国で起こる心配はないと、IEAでは核燃料を国産と示しているのです。
明らかにIEAの守備範囲は中東戦争やテロ行為などの危機を乗り越えること位でしかないことを示しています。核戦争などのもっと大きな危機はIEAの責任範囲ではありません。

2018年

さて原発事故から8年経った2018年にはどうなっているのでしょうか。2020年10月時点では、これが最新のデータとなっています。2020年はまだ終わっていませんし、終わって一年近くかけて前の年のデータを一般公開しますので、2019年のデータはまだ出ておりません。

ここで1973年、2010年、2018年と出そろいましたので、比較がしやすいように三つの図へのリンクを張ります。戻るには左上の←で戻ってください。
1973年のサンキー図を見る
2010年のサンキー図を見る
2018年のサンキー図を見る

2018年の図で顕著なのは、左端にあるNuclear prodが大幅に減ったことです。もちろん稼働する原発が大幅に縮小されたことを表します。今や原発はサンキー図では細い流れに過ぎなくなりました。
良く見ると2010年と2018年の違いは、power statironの下に流れるpower lossesにも見られます。少し細くなっています。原発は効率が悪いことが解るでしょう。原発稼働が少なくなったので、power lossesが少なくなったのです。power lossesは海水に放出される熱ですから、人工的に海を暖めている発電所からの大量の熱エネルギーを、少し減少させたことを意味します。日本近海を暖めている要因を、少し減らすことが出来たのです。

一次エネルギー

上記サンキー図の左端にあるエネルギーを一次エネルギーと言います。1973年のサンキー図は、その年の一次エネルギーのほとんどが原油だったことを示しています。これだけ原油に頼っていたから、中東の危機に脆弱だったわけです。
その後エネルギー業界は一次エネルギーの分散化に努めるようになります。60年代初期までは一次エネルギーの中心だった石炭を再度増やし、また天然ガスを大量に使うようになります。そして核エネルギー利用を促進しました。原発です。
以上の一次エネルギーが、資源によるエネルギーです。資源によるエネルギーは石炭、石油、天然ガスの化石燃料、それに核燃料しかありません。そして資源によるエネルギーは有限であり、未来永劫に渡って使えるわけではありません。
資源によるエネルギー以外の一次エネルギーは、自然エネルギーだけです。これには様々なエネルギーがありますが、ほとんどが太陽からのエネルギーです。Baio/wasteは基本的には生物由来のバイオマスですが、生物が何故エネルギーを持っているかというと元はといえば、光合成によって太陽エネルギーが閉じ込められたからとなります。またHydroは水力ですが、水力は山に降った雨のエネルギーです。水力は気象の一部ですが、気象は太陽が生み出します。
資源による四種類のエネルギー以外には、自然エネルギーしか一次エネルギーとしてはあり得ません。電気は発電によって、何かの一次エネルギーから生成される二次エネルギーです。水素も電気分解から生成されます。つまり電気を蓄える方法の一つです。またCO2を再利用して燃料にするみたいな話がありますが、CO2を燃料にするためには、何か他のエネルギーを使わなければなりません。早い話光合成はCO2から生命体を増殖させる、つまりエネルギーの蓄えを増やす、CO2を燃料化する方法です。光合成には太陽の光が必要と教わったでしょう。それが太陽エネルギーを蓄えるために光合成があることを教えてくれているのです。
さてそういうわけで、自然エネルギーを一次エネルギーとして増やしていかなければならないのですが、その先進国のエネルギーサンキー図を見てみましょう。

エネルギー基本計画=電源構成?

経済産業省がまたエネルギー基本計画を見直すというニュースが流れました。そして電源構成の話が蒸し返されるようです。
これっていつも不毛な議論をしているなと思います。何故って? エネルギー=電気という発想が不毛だからです。日本の最終エネルギー消費も1973年~2018年に至るまで一番多量に使われてきたのは石油製品であることがこれまで見てきたサンキー図から明らかです。
日本では基本計画と言えば原発の話となり、原発反対の人達は、自然エネルギー発電の話をします。ドイツやスウェーデンが進んでいるという話になりますが、ドイツやスウェーデンのエネルギー消費の実態を皆さん知っているのでしょうか?
IEAからはすべての国のエネルギーサンキー図が示されています。2018年のドイツとスウェーデンのエネルギー消費の実態を見てみましょう。まずドイツです。

次にスウェーデンです。

2018年のエネルギー消費のサンキー図を、日本、ドイツ、スウェーデンの順に見ます。リンクがそれぞれ張ってありますから、ジャンプして見てください。戻るには左上の←で。
2018年の日本のエネルギーサンキー図
2018年のドイツのエネルギーサンキー図
2018年のスウェーデンのエネルギーサンキー図
左端のエネルギー種別の太さを比べてみてください。化石燃料以外に、日本と比べて明らかに太い線があります。Bio/wasteとNuclearは日本より太い。言い換えればそれらのエネルギーが日本より多く使われています。また他の種類のマイナーな一次エネルギーが心持ち日本より太いような気がします。
さてそれらの一次エネルギーが、すべてpower stationに行っているでしょうか? そうでもないことがサンキー図から解ります。例えばBaio/wasteでも二本に枝分かれし、一本はpower stationに行きますが、もう一本はそのまま右に流れています。右側はエネルギー消費現場でのエネルギーを表し、エネルギー消費現場でのエネルギーは最終エネルギー消費と言われます。つまりバイオマスなどが直接エネルギー消費現場で燃されて利用されているのです。
今一つ面白いことがあります。power stationの右を見てください。二本では分岐が二本ですが、ドイツ、スウェーデンでは分岐が三本となっています。水色の線は電気、灰色の線はパワーロス、つまり捨てられる熱ですが、第三の比較的細い線が出ています。これは熱供給と言って捨てられる熱ではなく、利用される熱のことです。
このように書くと、ああ日本では捨てられている発電所から出る熱が、環境先進国では利用されているのだなと考える人もあるでしょう。しかし多くの場合そうではないのです。燃料を燃して発生する熱を、分配しているのです。熱を発生させ、それを配っているのです。つまり環境先進国は、自然エネルギーを電気に変えるという固定された考え方ではなく、エネルギー源をどのようにすれば最も良く利用できるだろうかとその場合に合わせて考えているのです。その結果他の記事で書いたように、環境先進国ではCO2削減にも成功し、また自然エネルギーを元とする最終エネルギーの比率(renewable share in final energy consumption)を増すことに成功しています。一方日本のこの比率は、先進国中最悪である状態です。エネルギー基本計画で、電源比率しか考えないような硬直した思考法が、この惨状を招きました。

日本ではCO2削減がこの30年間ほとんど達成されていないという記事を見る
renewable share in final energy consumptionの日本ー北欧対比の記事を見る

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