見える現代日本のエネルギー-サンキー図

近年のモンスター豪雨などは、明らかに化石燃料大量消費が引き起こしています。もはや現段階では、少しでも出来ることをしようでは不足であり、戦略的な化石燃料消費激減が必要です。その為に皆が敵-化石燃料消費-を知ること。孫子の教えです。この未来への人類の生存をかけた戦いは、化石燃料消費との戦いなのですから。
この記事ではIEAが最近取り入れたエネルギー消費の可視化-サンキー図の紹介をします。それによってすぐ解るのは、電気ではなく石油が現代日本の最大の消費エネルギーであり、またその中でも道路上で消費されるエネルギーがほとんどであることです。敵との戦闘の場は、道路にありです。

エネルギーバランス表とサンキーダイアグラム

国際的なエネルギー統計組織であるIEA(International Energy Agency)から、見て解りやすく、各国のエネルギー消費を、年を追って調べることが出来るツールが公開されています。サンキー図(Sankey diagram)です。それをご紹介しましょう。
実際に見ながらご説明するのが、解りやすい方法だと思います。下にその例をIEAのHPからコピーしてお見せしましょう。

日本のエネルギーバランスを表すサンキー図(2018)    IEAのHPより転写

上の図がサンキー図の例です。2018年の日本でのエネルギーバランス表に対するサンキー図です。エネルギーバランス表というのはまたあらためてご説明するとして、この図を見ながらご説明していきます。記事のあちこちにこの図をすぐ参照できるよう図1を見るでリンクを張ってあります。クリックで図にジャンプしますし、元に戻るときは左上の←で戻れますから、図を見ながら記事を読むことが出来ます。
図は左から右への流れを表しています。図は複雑に絡んだ複数の線から構成されていますが、線の太さがエネルギー量を表します。

各線の流れの説明 化石燃料

図1を見る。左上から見ていきます。一番上の細い線はOil prod、次の太い線はOil impとあります。Oilは直訳すれば油ですが原油を意味します。prodはproductionの略、またimpはimportの略。日本ではわずかに原油が生産されるが、多くを輸入に頼っていることが視覚的に解りますね。その二つが合流し、日本でのその年の原油消費として更に右に流れていきます。そして図の中程のrefinariesに入りますが、これは石油の精製をあらわします。原油が精製されることを意味します。そこに入る前にstatistical differenceが上に、stock changeが下に細く流れています。これはそれぞれ統計誤差、備蓄による調整となります。
細い線はとりあえず無視しましょう。細い線は少量であることを表しますから、とりあえずは無視して良いよと言っているようなものです。これがサンキー図の威力ですね。太い線に注目しましょう
石油精製では原油が精製され、ガソリンとか灯油とかに分類されます。これをまとめて石油製品(Oil products)と呼びます。上の図では、国内で精製された石油製品に、輸入した石油製品が多少加わって、さらに右へと流れる様が見て取れます。
図1を見る。
また左に戻ります。次は石炭(Coal)です。これも大量の輸入とごくわずかな国産とが、国内消費に向かって右へ流れます。さらに下には天然ガス(Gas)がやはり大量に輸入され、わずかな国産と合流している様が見て取れます。
以上がすべて化石燃料で、日本のエネルギー消費は、圧倒的に化石燃料を使っていることが多いとわかります。それもほとんどが輸入によります。エネルギーを輸入に頼り切った日本。大丈夫なのでしょうか

化石燃料以外のエネルギー源

さらに下に行きましょう。まずBio/wasteですが、これはバイオ及び廃棄物(要するにごみ)です。これも一部は輸入されています。でも国産も輸入も細い線ですね。つぎのGeothは地熱(Geothermal )です。Otherは他の自然エネルギー、Hydroは水力です。これら自然エネルギーは当然国産です。
一番下のNuclearは核エネルギーです。これは厳密には国産ではないですが、エネルギー業界では核エネルギーは国産として取り扱う可笑しな習慣があり、とりあえずそのまま見ていくことにします。でも以上はすべて細い線です。化石燃料に比べてチョウ少ないよです。

一次エネルギー供給

以上で上の図にある左の言葉の説明が済みました。これらはすべてエネルギー源です。それも真の意味で。あるいは第一次のエネルギー源とも言えるでしょう。
ここに電気がないのにご注意下さい。電気は発電されなくてはならず、したがって一次のエネルギーではないのです。このように左端にあるエネルギー源のことを一次エネルギーとよび、その量を一次エネルギー供給と呼びます。一次エネルギーについては、この記事の最後にまた振り返ることにしましょう。

エネルギーの流れに増減はない

サンキー図はエネルギーの流れを表します。例えば原油が精製され国産の石油製品となりますが、その太さは変わりません。原油が持つエネルギー量は、そのまま石油製品のエネルギー量となります。これはエネルギー保存則を表しています。また国産の石油製品と、輸入の石油製品が合流しますが、そのとき量が足し合わされますので、線の太さも足し合わされています。この先、流れが分流する例も数多く見ていきますが、二本に分流するときは、それぞれの量(太さ)を足し合わせれば、元の量(太さ)になります。サンキー図の線の太さには増減は全くありません。これがエネルギー保存則の意味することです。
図1に行く

power station

各種エネルギーの流れを右に向かって行くと、真ん中より少し右に行ったところで、ほとんどのエネルギーが二本にわかれ、一つはそのまま右に、もう一つは大きく下に曲がってpower stationに入ります。そのまま右に行くエネルギーは、そのままのエネルギーとして消費現場に向かいます。例えば石油製品は石油製品として。言い換えれば精製所からのガソリンはそのままガソリンとして、灯油はそのまま灯油として消費されます。
一方power stationに合流した流れは、二つの流れに分流します。一つは水色で表されたエネルギー、もう一つはpower lossesと名付けられたエネルギー。この二つに分流するエネルギーは、power stationに入ってくるエネルギーと同量です。線の太さは変わりません。
図1に行く
水色で表されたエネルギーは電気です。power stationは主として発電所を意味します。様々なエネルギーが発電に使われていることが図に表されています。そしてその量も線の太さで解ります。石炭と天然ガスが非常に多いですね。
一方発電所から右に出ているpower lossesは火力発電所や原子力発電所から出ている熱エネルギーを表します。電気エネルギーとほぼ同じ太さでしょう。つまり我々は得られた電気エネルギーとほとんど同量の熱エネルギーを発電所からはき出させているのです。それはほとんどが海に向かいます。
水力や風力などの自然エネルギー発電ではこの無駄な熱エネルギーは発生しません。一方火力発電の平均効率は40%。言い換えれば60%は熱になります。つまり発生した電気の1.5倍の熱が出ます。原発の効率は更に悪く1/3。残りの2/3は熱として海に捨てられます。言い換えれば原発が発生した電気エネルギーの、倍の量の熱エネルギーが海に捨てられます。それやこれやで、発電量とほぼ同じ量の熱エネルギーを発電所は生成しているのです。

石油製品が一番、電気が二番

power stationですべてのエネルギーが出そろいます。更に右を見ていくと、エネルギーの最終的な流れ先がわかります。様々なエネルギー消費現場で消費されるエネルギーです。サンキー図の左端に表される一次エネルギー供給に対して右端の部分は最終エネルギー消費と呼ばれます
上に示した図で、power stationより右に残ったエネルギー種別を見てみましょう。石炭および天然ガスは、ほとんどが発電に使われ、最終エネルギーとしてはかなり細くなりました。結果として最終エネルギーに使われるエネルギー種別は、かなりの部分が石油製品であり、また電気がそれに次いで多いという構造が浮かび上がります。日本の基本的なエネルギー事情は、「一に石油、二に電気」なのです。
図1に行く

final consumption

最終エネルギー消費の細部が解るサンキー図をIEAは提供しています。それを見て話を進めましょう。下の図がそれです。

日本の最終エネルギー消費を表すサンキー図(2018) IEAのHPより転写

この図を図2と呼ぶことにします。まず確認して頂きたいのは、この図が最初に出した図1のpower stationより右の部分を切り取ってそれを詳しく見るための図であることです。図1と図2に交代でジャンプして確かめて下さい。

図1に行く
図2に行く

詳しく比べると、図にの左側に何故heatというのがあるのか疑問を持った人は、素晴らしい観察力と言えます。しかしheatは細いので、とりあえず無視ということで先に進みます。
図2の左で一番太い線は石油製品です。つまり最終エネルギー消費で一番大量に使われているのは石油製品なのです。そこで石油製品を右に追って見ることにしましょう。
石油製品を含めて、すべての種別のエネルギーは、大きく四つの部門に分かれます。第一はindustoryすなわち工業、第二はtransportこれは運輸部門などと訳されますが、要は人と物の移動の為のエネルギー、第三はざっくりとothersすなわちその他です。
この分類いかにもエネルギー業界という感がします。エネルギー業界の最古参は石炭業界でした。産業革命の結果です。その結果まず工業が発達したことは、歴史の教科書で皆が知っていることです。従ってエネルギー業界の第一のお得意さんはindustoryです。また産業革命は英語でindustorial revolutionといったことからも、industoryが一番に来るのは解ります。そして石炭は蒸気機関車つまり運輸を変え、更に石油が決定的に人と物の移動法を変えました。そこでエネルギー業界の第二のお得意さんはtransportとなります。それ以外は今でもその他と分類しているのです。
さらにはエネルギー業界には意外な儲け先が出来ました。化繊やプラスチックなど、エネルギーとしてではなく材料にするというおまけがついてきたのです。そこで第四の部門としてnon-energy useつまり非エネルギー利用という分野が最終エネルギー消費として出てくるわけです。

transport, roadでのエネルギー消費が、ダントツで一番多い

図2に行く
さて石油製品の行き先を見てみましょう。これら四つの部門に、決してとりあえず無視とは言えない量で貢献しています。しかし明らかに最も太い線はtransportに向かっています。現代のあらゆる便利なtransport、自動車、飛行機、船などが、すべて石油で走っていることを考えると、なるほどと納得して頂けるでしょう。
さらにtransportを追って見ましょう。四本に分かれます。その四本とは、Road, domestic aviation, rail, domestic navigationです。つまり、道路、国内航空、鉄道、国内航路の四つです。このうち三つがとりあえず無視して良いでしょうのレベルなのに対し、道路でのエネルギー消費が大きいこと、サンキー図で一目瞭然でしょう。日本の道路は自動車、トラック、バスで溢れかえっています。これが日本でのそして世界での大量のエネルギー消費を牽引しているのです。エコカーという近年聞き慣れた言葉も、この実態を知れば空しく響くほどに。自動車氾濫社会を何とかしなければ、この社会は決して変わらないでしょう。

鉄道はエネルギー消費を激減させる

私は大学で文系の学生を長年教えてきました。その中でエネルギーの比重は当然時代と共に重くなりました。
社会的にもここ二十年ほど、化石燃料の話題はCO2削減として、その重要性を増してきました。しかし私はエネルギーで考えた方が解りやすいと、私の講義では常に主張してきました。その例がここにあります。
CO2削減という発想は、背後にある現実を曖昧にします。公共交通機関はエコであるみたいな、電車もバスも一緒にしてしまうことが当然のようにまかり通ります。しかしバスもRoad上でエネルギーを消費する乗り物で、実際バスの実走行燃費を調べるとリッター当たり2kmと、決してエコではないのです。
一方図2で解るように、鉄道では消費エネルギーが激減します。日本でこれだけ新幹線が走り、在来線も国内隅々まで普及し、大都市圏でこれだけ通勤電車が走っても、その消費エネルギーはとりあえずは無視して良いよ、レベルなのですから。この理由は簡単な物理学の考察でも解ることなのです。

持続社会へ向けて、交通手段の改善が大切なのは、現在のエネルギー消費がこれだけ大きいことで解るでしょう。戦略的に鉄道を活躍させる都市を数多く創出すること、それが環境にも優しい持続的な社会を未来に向けて造り出す非常に大きなステップとなります。

一次エネルギーについて

ここで一次エネルギーについて考えておきましょう。前の文をクリックして、一次エネルギーの項を確認して下さい。一次エネルギーは最初のエネルギー源です。電気は一次エネルギーではないのですね。また水素も一次エネルギーではありません。何故なら水素を大量に使おうと思えば、水の電気分解から得るからです。つまり電気エネルギーが元のエネルギーとなり、水素エネルギーに変わります。サンキー図を書けば、電気から水素に変わるが太さは変わらない、そしてまた水素は発電しますから、結局元に戻るだけですね。水素は電気を蓄える蓄電法の一つであるだけです。
科学の進歩で一次エネルギーが見つかるみたいなことを期待している人が多いのですが、それも理系の人も結構いるのですが、公式を覚えてそれを解くのが理科だと高校時代から思い込んでいた人のなれの果てだと思っています。理解なくして公式だけ解くのは、人ではなく機械と同じです。
エネルギー保存則を考えると、一次エネルギーは、化石燃料、核燃料、そして自然エネルギーしかありません。また自然エネルギーの元を正せば、ほとんどが太陽エネルギーです。
太陽エネルギーはもちろん核融合反応で放出されたエネルギーです。地球に届く量はそれだけで莫大なもので、今後も人類のエネルギー源として、永久的に存在し続けます。ただそれは地球全体に降り注ぐエネルギーで、化石燃料みたいに集中して利用されること、つまり密であることを嫌うエネルギーです。
科学の進歩で新しい一次エネルギーは見つかりません。化石燃料が使えなくなったら、太陽エネルギーを元とする自然エネルギーだけが、一次エネルギーとなります。自然エネルギーで快適に生きていける社会を建設すること、それがこれからの人類の最大の課題となります。そしてそれは可能であることを、このブログで発信していきます。それを理解することは、未来に限りない希望を持つことに繋がります。

まとめ

IEAが公表を始めたサンキー図について解説をしました。サンキー図はエネルギー消費を可視化するのに役立ちます。日本のエネルギー消費を見れば、第一に石油製品が多く、第二に電気となります。石油製品の多くは運輸に使われており、運輸はほとんどが道路上での消費となっています。

えねるぎぃっ亭南駄老でした。

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サンキー図の紹介は続きます。

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